こだわったのは、そのなめらかな舌触り。加糖タイプ、粒入りタイプも。
「千葉の落花生を未来につなぐピーナッツブランド」として2015年に始まったBocchi。関わってくださっている方々のおかげで今があります。Bocchiのまわりの素敵な方々をご紹介するとともに、代表・加瀬の「会いたい」を原動力にした新企画「みんなBocchi」。Bocchiに関わる方々のもとを訪れ、ピーナッツだけでなく地域や未来のことまでを一緒に考えます。
今回は、千葉県木更津市にある自然豊かな複合施設、KURKKU FIELDS(以下、クルックフィールズ)に伺いました。数年前に施設内にある人気のパン屋「Lanka」でピーナッツペーストを取り扱っていただいたのをきっかけに、昨年秋からはコラボレーションパンの販売や、マーケットでのお取り扱いも始まりました。Bocchiの畑にも何度か来てくださったクルックフィールズのメンバー。彼らを訪ねたのは、夏の日差しが眩しい日のことでした。
「食と農、アートと自然」をテーマにしたクルックフィールズは、施設内で有機野菜やハーブ、平飼いの鶏、水牛まで育てています。食の体験がぐっと詰まった場所なのです。32haの開放的な敷地には、目の前で作られた食材を堪能できる飲食店や、自然を存分に楽しめる宿泊施設などが点在し、入場すると高揚感が高まります。
最初に訪れたのは、ベーカリーの「Lanka」です。施設内のオーガニックファームで育てた小麦を製粉し、小麦粉から作り出すこだわりよう。フィンランド語で「糸」を意味する店名のとおり、種から食卓、人や地域を、パンという形で紡ぎ続けています。
Lankaを監修した「ル・シュクレクール」の岩永歩シェフと代表・加瀬が知り合いだったことから、ピーナッツペーストを販売していただいたのが始まりです。2022年11月からはBocchiの落花生やピーナッツペーストを使ったオリジナルのパンも製造、販売しています。Bocchiの畑や旭市にも何度か遊びに来てくださり、2023年の春からはBocchiのツキ市にも出店いただいている仲なのです。
「今、Bocchiを使ったパンは5種類あります。ベーカリーにしてはピーナッツの商品が多いねって言われるんですけど、お客さんからも好評なんです。ツキ市にいつも来てくださるファンの方もいるんですよ」
忙しそうにパンを焼きながらも「試作品、食べてみます?」と、笑顔がまぶしい厨房のお二人。Lankaの高木あゆみさんと米山紗弓さんにお話を伺いました。
高木:加瀬さんの第一印象ですか?黄色いオーラが出ているような元気な方。ピーナッツオーラって感じです(笑)
米山:Bocchiさんに伺うまで、生産者さんから直接話を聞くってことがなかったんです。「こんな思いで作ってるんだ」とか「こんな人がいるんだ」ってすごく新鮮で。自分たちの仕事だけじゃなくて、地域や周りの人を一緒に持ち上げていこうとする姿に惹かれたのを覚えています。
加瀬:嬉しいですね。僕から見たふたりの印象は、最初「リスみたい」と思ったんだよね。ぶっちゃけた話、ちょっと頼りなさも感じて。でも、コラボレーションパンを食べた時に純粋に「すごい!」って思って。さらに、岩永シェフ監修のもとで二人で試行錯誤しているって聞いて、もっと「本当にすごい!」って(笑)。大変なこともたくさん乗り越えてきたからこそ、このパンが作れるんだろうなって。
高木:ありがとうございます。必死です(笑)。コラボレーションパンも、もともとは岩永さんからの宿題で「千葉県で同じ思いを持っている生産者さんなので、Bocchiを使ってパンを作ってみなさい」と。
加瀬:なにか意識したこととかはありますか?
高木:とにかく落花生!と伝わるパンを作りたくて。あまり他のものを入れずに、素材を感じられるものを目指しました。考えるうちに、ピーナッツペーストとクロワッサンが相性が良いことに気づいたんです。特にBocchiのピーナッツペーストは重すぎないので、軽いクロワッサン生地に練り込むとうまく馴染んで。
加瀬:ピーナッツを使ったパンって意外と難しいと思うんですよね。ピーナッツ自体にクセがあるので、パンの風味を消してしまうことがあるんですよ。だから、ピーナッツペーストを練り込んで、さらに上から粒をまぶすクロワッサンって発想がすごい。天才だなと。
米山:Bocchiの落花生は、噛んだ時の甘みが濃い気がします。ペーストにもその甘みが最大限込められている。それでいて、胃もたれしないのが不思議なんです。正直、落花生のイメージが変わったかも。
高木:私もです!実はピーナッツペーストってあんまり得意じゃなかったんですけど、Bocchiさんのものは買いたいって思います。
加瀬:「買いたい」と言ってもらえるなんて!いやあ、本当に嬉しいですね。「もたれない」って部分で言うと、とにかく豆を酸化させないからなんです。工業製品のように大量に作られるピーナッツバターは、かさばる殻はどんどん剥いて乾燥させていくので酸化が進むんです。Bocchiではギリギリまで剥きません。一粒ずつ、命として大事に扱うことにしています。
米山:実際に畑を見学したときに「ここまで手が掛かってるんだ!」って驚きました。本当に一粒、一粒、丁寧に扱われている。小麦もそうですけど、最後の一粒まで大事に使いたいって改めて思いました。私たちはベーカリーとして、Bocchiと同じ気持ちで地域や周りを盛り上げようと思っています。関われたこと、すごく嬉しく思います。
加瀬:ぜひ、また遊びにきてくださいよ。
話に登場したピーナッツを使ったパン、その名も「Bocchi」を購入し、Lankaから場所を移します。続いてお話を伺うのは、マーケット担当の佐藤剛さんです。佐藤さんはこの春からオープンしたマーケットの仕入れや売り場づくりを担当しています。入り口付近にあるマーケットでは、Bocchiの「畑で採れたピーナッツペースト」や「畑で採れたピーナッツの蜜煮」を販売。殻までディスプレイとして活用しているのは、佐藤さんのアイディアです。
「『この植物がこの商品になっている』というのを、少しでも伝えたいなと思って。商品を卸してもらって販売する側として、良い仕事がしたいなと思ってるんですよ」
マーケットに並ぶ商品は千葉で作られたものがメインで、直接会ってお話ししたことがある生産者のものがほとんどだと言います。生産・製造方法のこだわりだけでなく、そこにある人の想いまでを汲んで仕入れ・販売をおこなっているのです。不思議と古い友人のような雰囲気がある佐藤さんに、青空と日差しのもとでお話を伺いました。
加瀬:しっかりお話しするのって、実はまだ3回目くらいですよね。
佐藤:ときどきベーカリーのメンバーから「Bocchiの人が来てるよ」って聞いてたので、数年前から存在は認識していたんですよ。加瀬さんは見た目もシュッとしているしさ、真っ当な感じに見えてたの。ちゃんと産業に携わって会社をやってる人なんだなと思ってた。しっかりとコミュニケーションを取ったのは、2022年の秋にタブロイド『KURKKU FIELDS story』の取材に行かせてもらったときかな。いざ話してみたら、もちろん真面目に地域や産業に向き合っているんだけど、オタク気質だし、普通にぶっ飛んでるなって思った(笑)
加瀬:あはは、なるほど。
佐藤:そのぶっ飛び具合を知って、僕のなかでの高感度は上がってますからね。落花生を赤ちゃんのように愛でるところとか、変態っぽいところ、好きですよ。
加瀬:あはは、それはよかったです!
佐藤:どちらかと言うと僕もぶっ飛んでる側の人間だし、友人にもいっぱいいるんだけど、そういう人たちって見た目で判断されちゃったりするんですよね。社会に対して考えてることも想いもいっぱいあるんだけど、それを世の中に響かせようと思っても色眼鏡で見られたりして、もったいないなと思うことがある。だから、加瀬さんみたいに殻をかぶった人というか、カモフラージュしながら熱い想いを持ってる人っていうのは、多くの人を動かすことができるんだろうなって。そういうの、意識してたり……?
加瀬:まさか!ピーナッツは殻かぶってますけど、僕は“剥き身”ですから!(笑)
佐藤:(笑)
加瀬:僕自身は別にぶっ飛んでなくて、想いを持ってるだけなんですよ。それを体現してくれてるのはうちのスタッフたちや生産者さん、手剥きしてくださっている方々なんです。カーテンの向こう側には、産業を支えてくださっている方がたくさんいることを伝えたいだけ。シュッとしてるって言ってくださいましたけど、中身は詰まりすぎてる、殻の中に。
佐藤:それが面白いなあと思いますよ。
加瀬:僕は逆に、剛さんに対して第一印象とのギャップとかないんです。Bocchiに来てくださった第一声で、Bocchiのブランディングでお世話になった根岸さん夫婦と友達だってわかったから。
佐藤:僕も共通の知り合いとは知っていたんだけど、そこまでBocchiに深く関わっているとは知らなかったんですよ。
加瀬:根岸さんは、それこそ僕のなかに詰まった「ピーナッツを日本の食卓へ」という熱い想いを形にしてくれた恩人なんです。最初にデザインをお願いしたときに、「加瀬さんやりたいことってブランディングじゃないですか」って教えてくれて。それから何時間も喋り込みながら、一緒にBocchiというブランドを生み出してくれました。
佐藤:共通の友人がいるってわかってからは、すぐに打ち解けたよね。
加瀬:そうですね。しかも、食にこだわりを持っていて、海もお好きだと聞いて、すごい親近感を持ちました。海を愛しているのは、地球を愛しているってことですから。僕も海が大好きだからこそ、海と接してる旭市で、大地を汚すような農業ではなく、心地のいい農業がしたいんです。
佐藤:加瀬さんのお話を聞いていると、自分の事業っていうよりも、次の世代やもっと先の未来に対して「こうあってほしい」という思いが強くありますよね。みんながみんな、それを第一にはできないと思うんですよ。クルックフィールズもそうなりたいと思っているので共感します。ただ、それってすごく難しいですよね。
加瀬:僕だけがんばってもダメですからね。地域や周りをどうやって巻き込んでいけばいいのかなと思って。
佐藤:たしかに1人で頑張っても解決しない。実際に誰かの想いと行動から町全体が変わった事例もありますよね。地域の農家さんが「一緒にやってみようかな」と思えるほどに商売性も担保しなければいけないから、大変だと思うけど……。
加瀬:現状維持ではなく、さらに良くなるようにしないとですよね。人を巻き込む力は、クルックフィールズさんにも学ばせていただきたい。
佐藤:クルックフィールズは『プラットフォームでありたい』という想いがあるんです。いろんな人がここに来て、なにかと出会って新しいことを始めたり、ここで出会った人同士で何かが起きたりしたらいいな、と。僕個人としても、ハブとなって人と人をつなぐような役割を担えるようになりたいと考えています。
加瀬:僕らもツキ市をやって、多様な人が集まるメリットを感じています。1人で考えていても答えが出なかったことも「そんな視点があったのか」っていう驚きがたくさんありました。
佐藤:Bocchiさんのツキ市だったり、クルックフィールズだったり、人が混ざり合う場ができていったらいいですよね。そうすると、各所でいろんな新しいことが動き出すんだと思います。
佐藤:数日前にBocchiにお邪魔したときも、やっぱり新しい視点が増えた気がしましたね。落花生の収穫は初めてだったから、話だけ聞いていたときよりもリアリティが増しました。
加瀬:わざわざ来てもらえるのが、こんなに嬉しいことかって思いました。 僕らが手塩にかけて築き上げてきたものを体感しに来てくださって、その場で落花生を一番おいしい状態で食べていただけて。やっぱりすごくいいですよね、会うって。
佐藤:そうですよね。実際に現場に行ってみると、本当にかなり手探りでやられているのも見えてきて。知らないことにも突っ込んでいくアグレッシブさを感じました。僕らも自社でいろいろ育ててみたり、加工品にしたり、0→1の仕事をしているので勉強になります。
加瀬:いやあ、手探りですよ……。でも、僕は今のままだと、ただのピーナッツの代弁者であるだけで終わっちゃうと思ってて。だからこそ、クルックフィールズさんのお力もお借りしながら、なにかおもしろいコラボレーションが今後もできたら嬉しいなと。
佐藤:うん、さっき言った「プラットホームになりたい」って話を真に受けてもらっていいので。ツキ市をここでやりたいとか、マーケットでポップアップをやってみたいとか。ここを自分のお店だと思ってもらって構わないと思ってます。自分の利益だけを考える人だったらお断りだけど、世の中のためになにか前進するかもしれないことだったら、きっと一緒にやれる。
加瀬:いいですね。
佐藤:僕らも自分たちで農作物を作っているから、そのあたりで相談させてもらうこともあるかもしれない。逆に、うちのスタッフが持っているスキルで、なにか協力できることもあるかもしれないね。関わるのは、Bocchiとクルックフィールズだけじゃなくて、同じ感覚の人たちが集まってもいい。
加瀬:それは楽しみだなあ。剛さんと話していると、いつもこうやってたくさんのアイディアが溢れて、気がつくと時間が経ってる気がします。
佐藤:僕自身が実行できないこともいっぱいあるから、加瀬さんのなかでなにかが採用されたら嬉しいし。「こんなのもおもしろいよね」っていう前向きな話は、止まらなくなりますから。
加瀬:剛さんのなかで湧いてくるんでしょうね、泉のように。ただただ、そこに惹かれています。
佐藤:図々しいかもしれないけれど、自分が開いてないと相手も心を開かないから。自分のことは包み隠さずに、全部言うようにしてるんですよね。
加瀬:剛さんも、つるっつるの“剥き身”ですね!(笑)
最後に、今回の訪問を振り返った代表・加瀬の言葉で終わりにしたいと思います。
「今回の訪問では、たくさんの笑顔に出迎えていただきました。お話を伺った方々のほかにも、受付やマーケット、施設内でご挨拶してくださった方々がみんな『あ!加瀬さん!』と近寄ってきてくださったのが嬉しくて。クルックフィールズのみなさんの、あたたかさを感じましたね。なんか、すごい愛されてるなって感じて(笑)。本当に嬉しいです。根岸さんと話してブランド立ち上げたときから、『カーテンの向こう側をどうやって伝えたらいいんだろう』って必死にもがき続けています。必死にやってきたら気づいてくださる方が増えて、なかでもクルックフィールズさんはガツンと来てくださった。ありがたいの一言です!」
佐藤さん、高木さん、米山さん、そしてKURKKU FIELDSのみなさん、ありがとうございました!これからも、Bocchiをどうぞよろしくお願いします!